目次
2008年からクレジット創出!高知県 / カーボンクレジット創出者インタビュー
現在「排出削減クレジット」と「森林吸収クレジット」の2種類のクレジットを創出している高知県様に、クレジット創出までの背景や経緯など詳しくインタビューさせていただきました。
高知県 : 三枝さん、荒尾さん
(インタビュアー:Sustineri社員)
クレジット創出のきっかけ
ーーー高知県さんでは二種類のクレジットを創出しているとお聞きしました。具体的にどのようなクレジットを創出されているのでしょうか?
三枝さん : 高知県では森林吸収系クレジットと排出削減系クレジットを創出しています。森林吸収系のクレジットでは、県有森を整備し現在までに累計2,305t-CO2分のクレジットを創出しました。排出削減系クレジットは、間伐後に廃棄される枝葉等を「木質バイオマス」として燃料化し、地元工場の発電ボイラーの化石燃料に代替することで実現したCO2の排出削減量をクレジット化したものです。こちらは20,257t-CO2分のクレジットを創出しています。排出削減系のクレジットは2008年から取り組みを開始しました。その他、J-クレジット制度の前身であるJ-VER制度設立時に環境省から高知県の取り組みをモデルにしたいという話をいただき、J-VER制度策定にも協力しました。
ーーーJ-VER制度ができる前からクレジット創出を行っていたのですね!そして更にJ-VER制度を作る側にいらっしゃったとは驚きです。どこにでもある“木の枝葉”を使ってクレジット創出ができるというのも驚きです。
専門外の私たちからすると、森林管理しなければいけない森林吸収クレジットとは異なり、枝葉であればどの地域でも大量にあるような気がしてクレジット創出のハードルは低いような気がしてしまいます。しかし実際には認証プロジェクトは多くはないということは、私たちが思うほど簡単なことではないということだと思うのですが、どのような背景から創出に取り組まれたのでしょうか?
荒尾さん : 高知県の森林に放置されている伐採後の枝葉を何か有効利用できないか、と思ったことがきっかけです。高知県は土地の80%以上が森林で、伐採後の枝葉が大量に現地に放置されていたという現状がありました。この枝葉を有効活用ができないかと考え、当時仕組みが整いつつあったクレジットやカーボンオフセット制度に目をつけました。
ーーー捨てられている枝葉をどう利用するか、という考えから始まったのですね。初歩的な質問になりますが、削減系のクレジットはどのように削減量を計算し、信頼性を担保しているのでしょうか?
荒尾さん : 私たちが創出する排出削減クレジットは、石炭の代わりに木材バイオマスを用いることで創出されます。石炭を燃やした時の排出量と木材を燃やしたときの排出量を算出し、その差分をCO2排出が削減されたとみなすことでクレジット創出を行っています。その方法もJ-クレジット制度下で定められています。
信頼性は高知県に外部のクレジット創出の検証機関を設置し、国際的な枠組みの中でそのルールに則ったCO2削減量の検証を行うことで担保しています。
ーーーなるほど。しっかりとした制度や枠組みの中で、公正にクレジットを創出しているのですね!
高知県さんは高知県独自で地域版のJ-クレジットを創出しているとお聞きしました。なぜ独立した制度を設けられたのでしょうか?
荒尾さん : 国のJ-クレジット制度下で創出するよりも、より手軽にクレジット創出を行いたいと考えたからです。クレジット創出の際に最もネックになるのは審査や検証対応です。クレジットを創出するためには、プロジェクトが申請通りに実施されているかというのを現地で検証してもらう必要があります。そのためにわざわざ東京から高知まで検証人に来ていただく必要があり、また気候変動対策認証センターに膨大な量の資料を提出するなど、多くの手間がかかります。これを高知県内で完結できれば県内の事業者さんなどもJ-クレジットの制度に比べ手軽にクレジット創出が可能になり、クレジット創出促進にもつながると考え、地域版クレジット制度で高知県版J-クレジットを設立しました。現在では県内で検証人の育成も行っており、経費の削減だけでなく精度の高い認証制度づくりにも注力しています。
事業の大変なこと・やりがい
ーーー草創期からクレジット創出するまでに様々大変なことがあったかと思いますが、どのようなご苦労がありましたか?
荒尾さん : よく困難なことはありましたかと聞かれますが、正直に申し上げますとそこまでありませんでした。 もちろんクレジットを創出する上での書類作成、検証対応など苦労した点も多々ありますが、日本や世界のオフセットの潮流に乗っかった、という側面が強いかなと思っています。ただクレジット創出することよりも創出後に地域の人々にクレジットについて理解してもらうことにはかなり苦労しました。より多くの人々にカーボンオフセットを理解してもらうには、行政を巻き込んだ支援が不可欠だと感じています。
今後の展開と購入者さんへのメッセージ
ーーー貴社の今後の展開について教えてください。
荒尾さん : まずはカーボンオフセット制度の認知度向上が第一であると考えているので、注力していきたいです。また、高知県は全国でも有数の森林地帯ですので、森林資源の更なる有効活用に努めていきたいと考えております。
ーーー最後に、オフセットを検討している方々へのメッセージをお願いします!
三枝さん : クレジット売却による収益は高知県内の森林の整備に充てられます。高知県クレジットでカーボンオフセットを行っていただくことは、高知県の森林保全にも貢献していただいているということをお伝えしていきたいです。
荒尾さん : 高知県には豊かな自然があります。森があり、清流があり、多くの生き物が住んでいます。クレジットを購入することは、美しい高知の風景を維持することにつながりますので、カーボンオフセットを通して高知の保全に協力していただければ幸いです。
ーーーありがとうございました!
インタビューを終えて
Sustineri: 世の潮流を捉え、効率化を高める施策を打ちクレジット創出の促進に努めていらっしゃる高知県さん。歴史的背景から行動力のあるイメージを高知県には抱いていたのですが、クレジットのお話を聞くとまさに想像通りでした!草創期からのクレジット創出や、高知県版J-クレジット制度の策定、J-VER制度の策定に関わるなどどれも想像がつかないくらいご苦労をされたと思いますが、高知県としてのあるべき姿を第一に真摯に取り組まれていらっしゃるご様子が印象的です。
インタビュアーである筆者は高知県に行ったことがないので荒尾さんの仰る「高知には美しい風景がある」という言葉が気になり検索してみたところ、想像以上の絶景ばかり!オフセットをしながらこの美しい自然の環境保全にも役立つなんて、お得すぎる!と感じました。
高知県 概要
高知県 林業振興・環境部 自然共生課
〒780-0850 高知県高知市丸ノ内1丁目7番52号
共生社会担当 088-821-4554
ファックス: 088-821-4530
メール: 030701@ken.pref.kochi.lg.jp
ホームページはこちら
J-クレジットに関するサイトはこちら