気候変動問題が深刻化している中、旅行におけるホテル選びにおいてもサステナブルかどうかが重要視されてきています。しかし、特に日本においてはサステナブルな旅行の選択肢が不足しているのが現状です。
この記事ではホテル業界の方に向けて、サステナビリティとは何か、注目されている理由、取り組み方について解説しています。また、日本と海外での具体的な取り組み事例も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ホテル業界のサステナビリティとは?
サステナビリティとは、「持続可能性」を意味します。今の暮らしだけではなく、将来の世代にも配慮した考え方です。
例えば、現代において大量に石油を使い将来枯渇させてしまうことは、サステナビリティとは言えません。サステナビリティは、社会と環境に配慮しつつ、経済活動を持続可能な形で発展させるために使われてきた経緯があります。
そして、ホテル業界においてもサステナビリティが注目されています。具体的には、以下の取り組みを行うホテルが増えているようです。
- カーボンオフセットを行う
- 環境に配慮したアメニティを使用する
- 部屋の清掃が必要かどうか選択制にする
- 節電などの省エネを心がける
- プラスチックを削減する
これらのサステナビリティに向けた取り組みを実践しているホテルは「サステナブルホテル」と呼ばれています。
ホテル業界のサステナビリティが注目されている理由
日本政府が2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言したり、SDGsにおいて気候変動に対するゴールが含まれていたりと、サステナビリティの実現が急速に進められています。
そしてホテル業界においても、サステナビリティをコンセプトにしたホテルが大きく注目を集めています。
世界最大級の宿泊予約サイトBooking.comの調査によると、世界の旅行者の76%、日本の旅行者の56%がよりサステナブルに旅行したいと回答しました。一方で、世界の旅行者の51%、日本の旅行者の54%がサステナブルな旅行の選択肢の数が十分にないと回答しました。
この調査結果から、旅行におけるサステナビリティの需要が大きく高まっていることがわかります。
ホテルがサステナビリティに取り組む方法
実際にホテルがサステナビリティに取り組む方法を紹介します。
SDGsを推進してサステナブルホテルの認証を取得する
サステナブルホテルとして認証を取得することは、環境に配慮していることのアピールになります。取得のメリットは、ホテル利用者にとってサステナブルホテルであることが分かりやすいことです。また、認証取得の際には審査員が入念に審査する場合が多く、信頼性が高いです。
Booking.comの調査では、世界の旅行者の59%、日本の旅行者の35%は「次回予約を行う際はサステナブル認証を受けた宿泊施設を絞り込んで検索したい」と回答しました。さらに世界の旅行者の65%、日本の旅行者の52%は、「宿泊施設がサステナブル認証やラベルを取得済みだとわかった場合、その宿泊施設での滞在についてより好ましく感じる」と回答しました。
日本の旅行者の認証に対する意識は世界と比べて高くありませんが、何らかの認証を取得していることはホテル選びの際に有利になるようです。
様々な機関による認証がある中で、ここでは国内における2つのサステナブルホテル認証を紹介します。
1.「サクラクオリティグリーン」
「サクラクオリティグリーン」取得には前提となる条件があります。宿泊施設におけるサービスの安全・安心・誠実を評価する「サクラクオリティ」を取得することです。「サクラクオリティ」取得のうえ、SDGsに特化した施設が「サクラクオリティグリーン」に認証されます。
参考:https://www.sakurastay.com/stay
2.「エコマーク」
「エコマーク」取得には、廃棄物削減・省エネ・節水などの環境配慮の他、宿泊客が施設利用を通して環境に対する意識を高められるよう取り組むことが求められます。具体的には、施設による環境配慮の取り組みについての発信などです。このような認定基準を満たした上で、審査委員会による審査が行われます。
参考:https://www.ecomark.jp/service/hotel/
カーボンオフセットができるサービス「Susport」を利用する
「Susport」を利用することで、ホテルにおいて排出された温室効果ガスをカーボンオフセットできます。
カーボンオフセットとは、企業活動などによって排出される温室効果ガスに対し、他の場所で温室効果ガスを削減・吸収するプロジェクト(森林保全活動など)に資金提供を行う(カーボンクレジットを購入する)ことによって埋め合わせする仕組みです。
カーボンオフセットのメリットは以下のとおりです。
- 費用に対する温室効果ガス削減量(費用対効果)が高い
- 確実に温室効果ガスを相殺できる
- 削減量が数値化できるため分かりやすく、PRしやすい
- 手軽ですぐに開始できる
カーボンオフセットの実施を検討している企業様は、多くのサポート実績があるSustineriにお任せください!ホテルの所在地域に近い場所の森林保全活動等に資金提供することもでき、新たなPRにつながります。
【日本】ホテルのサステナビリティへの取り組み事例
日本でサステナビリティを推進しているホテルの取り組みを5つ紹介します。
ここで紹介しているのは、サステナビリティを追求することで宿泊客に負担がかかったり、ホテルのコンセプトの支障になったりしない取り組みです。むしろサステナビリティという新たな価値を付加し、より多くの宿泊客に選ばれるホテルとなっています。
1.スーパーホテル(全国)
ホテルのコンセプトは、サステナブルで健康的なライフスタイルの提供です。
宿泊時に排出されたCO2排出量を100%カーボンオフセットする「ECO泊」を行っています。その取り組みが高く評価され、環境省からホテル業界で唯一エコ・ファースト企業に認定されました。
下のグラフは、ECO泊のカーボンオフセットによるCO2削減量(オフセット量)とECO泊の利用数を表したものです。グラフから、ECO泊の利用が着実に増加しており、特に2020年から2022年にかけて利用数が大きく拡大していることがわかります。
2.札幌プリンスホテル(北海道)
1泊1名に付き10kgのカーボンオフセットができる「カーボン・オフセットSAPPOROステイプラン」を提供しています。
1日1人あたり5kgのCO2を排出しているとされているため、事実上CO2排出ゼロで1泊2日の宿泊ができます。宿泊料金にあらかじめカーボンオフセットの費用が含まれているため、手間がかかりません。
3.イトマチホテル 0 (愛媛県)
エネルギーを消費しない日本初の「ゼロエネルギーホテル」です。ホテルが消費する電力エネルギーをできる限り削減した上で、太陽光パネルからエネルギーを創出してエネルギーをゼロにする仕組みです。
脱炭素と地域再生を目指した新しいホテルとして注目を集めています。
4.ダイワロイネットホテルズ(全国)
このホテルはエコマークを取得しています。LED照明への切り替え、空調機の省エネ化、トイレの節水装置導入などの省エネ活動と、より環境に配慮した客室アメニティや消耗品・事務品の選定などの脱プラスチック活動を特に推進しています。
5.帝国ホテル(全国)
客室アメニティ、ストロー、カトラリーやペットボトルをプラスチック製から紙製などに切り替えることで、プラスチック使用量を約85%削減することを目標にしています。
また、「人に、地球に、未来にやさしい」商品として、耳まで白くて新食感な食パン、りんごの絞りかすで作ったレザー、果物の皮を使用したカクテルなどサステナブルなアイデアの光る商品を提供しています。
【海外】ホテルのサステナビリティへの取り組み事例
海外で、サステナビリティを推進しているホテルの取り組みを5つ紹介します。
斬新なアイデアや先進的な技術などを用いて、サステナビリティを大きなコンセプトとして打ち出しているホテルをまとめました。
1.アリア・リゾート&カジノ(アメリカ)
カジノではスロットマシンの台座で換気できるようになっており、天井の冷房が必要ありません。またラスベガスの日差しの強さを活かし、日中の電力の約90%をソーラーパネルで賄っています。
2030年までに再生可能エネルギーでホテル全体のエネルギーを100%賄うことを目標にしています。
2.アークティック・ブルー・リゾート(フィンランド)
このホテルのコンセプトは「最大限サステナブルに」です。これはホテルが位置するコンティオラハティ市と共同で考えられました。
ホテル利用客のエネルギー消費量、植林などのアクティビティへの参加、持続可能な食事の選択などにより、宿泊料金を変動させる革新的な取り組みをしています。
3.ファイベレメンツ・リトリート・バリ(フィリピン)
ほとんど全ての廃棄物が再利用される「ゼロウェイストホテル」です。それに加えてプラスチック製品は極力使用されていません。廃棄されたプラスチックはホテル敷地内で溶接・加工され、アメニティなどに生まれ変わります。
4.ヴィラ・インコグニト(ノルウェー)
このホテルのコンセプトは「サステナブルな贅沢」です。
太陽光発電を活用して再生可能エネルギーを100%使用したり、リサイクルに取り組んだりとサステナビリティの追求に重点を置いています。その上でラグジュアリーな空間を提供しています。
5.サファイア・フレシネ(オーストラリア)
このホテルが位置するタスマニア州は、2015年にカーボンニュートラルを達成し、オーガニックな農産物と地域のコミュニティを推進している州です。客室は自然を感じられるミニマリストなデザインで、家具にはタスマニア産の木材を使用しています。
オーストラリアで最も豪華でサステナブルなホテルの一つと言われています。
サステナブルなホテルを目指しましょう
国内外のホテルのサステナビリティへの取り組みを紹介してきましたが、今ではサステナビリティがホテルの魅力の一つになっています。
サステナブルなホテルを目指すには、主に再生可能エネルギーや環境に配慮したアメニティへの切り替え、認証の取得、カーボンオフセットの実施などの方法があります。エネルギーやアメニティの切り替えはすでに対応を始めているホテルが多く、また認証取得には時間がかかるため、これらの取り組みを進めながら並行してカーボンオフセットを実施するのがおすすめです。
カーボンオフセットはすぐに着手でき、貢献量を明確に可視化できるのが魅力です。そのため、お客様に対しても効果をPRしやすく、自社のホテルを選んでもらう大きな理由になり得ます。
カーボンオフセットの実施に関心をお持ちいただけましたら、豊富なサポート実績を持つSustineriにまずはご相談ください。商品・サービスの提供に伴う温室効果ガスを自動で算定・相殺できる、「Susport」というクラウドサービスを活用したサポートをご提案いたします。ユースケースや導入事例を参考にして、ぜひ導入をご検討ください。