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大規模なクレジット創出に期待!長崎県林業公社株式会社 / カーボンクレジット創出者インタビュー
対馬を中心に、植林から伐採までの森林造成事業を行い長崎の全体の地域経済を支えている長崎県林業公社様に、クレジット創出までの背景や経緯など詳しくインタビューさせていただきました。
長崎県林業公社:総務課 狩野課長、濱田主事
(インタビュアー:Sustineri社員)
クレジット創出のきっかけ
ーーー長崎県林業公社さんは、お名前の通り「公社」ということなんですが、具体的にどのような団体なのでしょうか?
狩野さん : はい。まず長崎県林業公社は非営利法人で、長崎県や長崎の市町から出資を受ける形で設立され、長崎県内の山や森林の管理を行っています。長崎県の対馬では、島の88%が森林となっており、1959年に前身である対馬林業公社が設立し、水産業に頼っていた対馬を中心に長崎の全体の地域経済を支えてきました。のちに事務手続きを行っていた県北林業公社と統合し、2008年(平成20年)に現在の長崎県林業公社となりました。
ーーー公共事業として、長崎の森林を管理しているんですね。なぜクレジットの創出を始めようと考えたのですか?
狩野さん : 2014年にJ-クレジット制度が発足した当時、全国各地で行われていたクレジット創出のセミナーを聞いたことがきっかけです。当時、1.1万haほどの森林を管理しており、またJ-クレジットの申請に必要な森林認証SGEC (森林が適切に管理されているかを評価・認証する制度のこと)をすでに取得していたので、新たな手間がいらず申請が可能であり、クレジット創出の取り組みを始めました。
当初の目的は、クレジットを売ろう!というよりも、クレジット創出を通じて所有林のCO2吸収量を数値化し、それを第三者に認証してもらうことでした。ですが実際に販売を開始すると、予想以上に様々な企業や団体様から購入のお申込みをいただくことができました。現在は新たに1万ha (野球場約2,173 個)ほどのクレジット創出を申請中です。申請が通れば年間に約5万t-CO2のクレジット創出が期待できます。
ーーー5万t-CO2のクレジットはボリュームがありますね!J-クレジットの森林プロジェクトでは最大級の規模になりますね。購入者さんはどのような方がいらっしゃるんですか?
狩野さん : 地域の建築会社、イベント系の会社、電力会社、製造業など業種は様々です。地域に拠点を持つ企業が、地元である長崎県で創出されたクレジットであることに魅力を感じて購入してくださるケースが多いですね。もちろん県外の方からも多く購入いただいており、森林由来のクレジットであることに価値を感じて購入していただく方が多い印象です。
事業の大変なこと・やりがい
ーーー森林吸収のCO2をクレジット化する上で、特に苦労したことはありますか?
濱田さん : やはり森林の実態調査はかなり苦労しました。私たちの場合は、先ほどのSGECを始め、森林計画や、現地の樹木の測量、樹木伐採後の適正な手続きなど、提出に必要な資料が比較的そろっていました。そのため、他の団体よりも取り組みやすかったとは思いますが、50か所もの林分を調査するのは骨が折れました。
ーーークレジット創出に着手する前にここまでクリアしている事業者さんはかなり少ないのではないでしょうか。今までの森林管理をとても丁寧に実施されてきたことが伺えます。
では逆に、森林のクレジット化に取り組む中で良かったなと思う部分はありますか?
狩野さん : まず、2050年までのカーボンニュートラルの実現に貢献できている、ということはとても良かったなと感じています。今までも林業を通して、環境保全に尽力して参りましたが、カーボンクレジットを通して、さらに環境貢献できているということにやりがいを感じています。また、クレジットで得られた資金は、森林の保全に充てているので、クレジットを売るほど、自然を豊かにしていくことができ、良い循環ができていると思っています。
他にも様々な方々との繋がりもとても増えたと感じています。通常の業務やお取引の中ではまったく接点のない、他業種や他県の様々な方達と関わることができ、またそこから新たな仕事が広がっていくこともありました。
ーーー森林由来クレジットを購入することは、管理されている森林の保全活動にも貢献できるんですね!
今後の展開と購入者さんへのメッセージ
ーーー貴社の今後の展開について教えてください。
狩野さん : J-クレジットの普及活動に力を入れていきたいと考えています。J-クレジットは、環境貢献の手段の一つとして存在しています。環境貢献を行っていきたい団体に対して、「私たちはクレジットを通してそのお手伝いをしていきます!」と発信していきたいと考えています。私たちは、“ながさきカーボンオフセット推進協議会“に参画していますので、地域の企業向けにセミナーを開催していくなど、草の根的な普及、啓蒙活動も行っていきます。
また、学術的な面から、クレジットの有用性/効果の検証についても行っていこうと考えています。“クレジット”や“オフセット“の仕組みはまだまだ発展途上で改善点も多くあると認識しています。現在長崎大学と提携し、大学生も巻き込んで今後のクレジットの意義についても思考を深めていきたいと考えています。
ーーー本業である森林の管理に加え、様々な場所で挑戦をされていくんですね!最後に、オフセットを検討している方々へのメッセージをお願いします!
狩野さん : 購入をご検討いただきありがとうございます!ご購入の際、頂いた資金は森に還元し、さらにCO2吸収力を高めていきます。この循環を加速させ、地球環境に貢献していきます!
ーーーありがとうございました!
インタビューを終えて
Sustineri: 本業である林業だけでなく、J-クレジットの普及活動、大学と提携し、学術的なクレジットの有用性の検討など、とても先進的な取り組みをされている団体様だと感じました。特に、いまだCO2吸収量の算出方法が曖昧であったり、実質的なクレジットの効果が不透明な現在において、「クレジットの有用性についての学術的な検討」は、今後クレジットを普及させていく上で大変重要な取り組みだと感じました。
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